No.058（父より、ガリレオへ）

父より、ガリレオへ

「ガリレオ、この世の中には、誰か他の人の意見を、本当だと思いたがる人がたくさん
いるんだよ。たくさんいすぎると言ってもいいかもしれないね。
　そういう人たちは、誰かがこういうことをいったから本当だとか、こういう本で読ん
だから本当だとか言いたがるもんだ。
　これは、変化を恐れ、新しい考えを恐れる人にとっては、うまく世の中を生きていく
方法かもしれない。だけど、お前は決してそんな人にはなってはダメだぞ。
　もしも、真実を求めるのなら、どんな時でも、権威に立ち向かうことを恐れてはいけ
ない。
　真実は、ある決まった人の名声に隠されるものではない。真実は、自由な魂が、
疑問にたいする答えを求めてやまない時にだけ、姿を現してくるものだよ。
　お前が何をするにしても、何が正しいとか間違っているとかいうことを決めるとき
に、ただ、権威だけに頼ることは、しないようにするんだね。そういう態度をとって生
きていくのは大変なことだが、一生のうちには、必ず報われるものだよ。」

「お父さん、今話してくれたことを、しっかりと覚えておくよ。」

　
ガリレオ・ガリレイ　Galileo Galilei 1564〜1642　
イタリアの物理学者・天文学者。ドイツの天文学者ケプラーとともに科学革命をおこ
し、この革命はニュートンの仕事によって花ひらくこととなった。天文分野の主要な業
績には、望遠鏡を観察につかったこと、それにより太陽の黒点、月の山と谷、木星の4
つの大きな衛星、金星の満ち欠けを発見したことなどがある。
物理学の分野では落下運動の法則と投射体(ほうりなげた物体)の軌跡を発見している。
文化史の中でガリレオは、研究の自由を迫害する権威に対する抵抗の象徴となっ
ている。