2015年8月15日土曜日

No.082(マイナス発想はなぜ病気になるのか)

マイナス発想はなぜ病気になるのか
春山茂雄(「脳内革命」の著者:田園都市厚生病院院長)

最近、プラス発想とか肯定的思考ということが盛んに言われるようになりました。「物
事はよい方へ考えるとストレスがたまらない」「何でも前向きに取り組んだ方が結果は
よい」というほどの意味に世間一般では理解されているようです。
同じことが医学の世界でも言われ始めました。心と身体はいつも対話をしている。そし
て「心で考えること」は、抽象的な観念などではなく、きちんと物質化されて「体に作
用する」ことが分かってきたのです。
人から何か言われて「嫌だな」と思うと、老化を早めたり発ガンを促進する物質が体内
に発生する。反対に「ありがたいな」と思うと、若さを保ち体を健康にする物質が作ら
れる。医学的にも私たちの体には、こういうメカニズムが働いているのです。
したがって、何でもプラス発想するクセを持っている人は病気に強い。めったなことで
は病気になりません。ところがマイナス発想ばかりしていると、情けないくらい簡単に
病気になってしまう。同じような境遇、ライフスタイルでありながら、ぴんぴん健康な
人と病弱な人が出てくるのは、全てがそうだとはいいませんが、この「心のもち方」の
差が非常に大きな意味を持っているのです。
では心のもち方によって体内に生じる物質とは何か。それは一般にホルモンと言われて
いるもので、このうち心のもち方に関係する主なホルモンとして、アドレナリン、ノル
アドレナリン、エンケファリン、β-エンドルフィン、などがあげられます。
人間は怒ったり緊張すると、脳内にノルアドレナリンが分泌されます。恐怖を感じたと
きはアドレナリンです。ホルモンとは細胞間の情報伝達物質のことで、いわば脳の指令
を細胞に伝えるものですから、怒りの情報が伝達されると、体はしゃきっとして活動的
になる。その意味では生きていくのに欠かせない物質なのですが、どういうわけかもの
すごい毒性もあるのです。
つまり、いつも怒ったり強いストレスを感じていると、ノルアドレナリンの毒のせいで
病気になり、老化も進み、早死にしてしまうのです。一方、いつもニコニコして物事を
良い方へ良い方へととらえていると、脳内には脳細胞を活性化し体を元気づける良い働
きのホルモンが出てきます。
これらのホルモンは若さを保ち、ガン細胞をやっつけ、人を楽しい気分にさせてくれま
す。人生を楽しく健康に過ごし、ガンにも成人病にもかからずに長生きしようと思うな
ら、このようによいホルモンが出るような生き方をすればよいのです。
人を楽しくするこのホルモンが、私のいう脳内モルヒネです。物質の構造式が麻薬のモ
ルヒネによく似ているからそう名付けたのですが、麻薬のモルヒネは依存症や副作用の
危険がありますが、脳内モルヒネの方は、その心配が全くありません。
人間に快感をもたらすホルモンは約20種ほど知られていますが、作用の仕方、強弱の
差はあっても薬理作用はほぼ同じなので、このような快感ホルモンを総称して「脳内モ
ルヒネ」と呼ぶことにします。
数ある脳内モルヒネの中で、最強の快感ホルモン物質はβエンドルフィンで、その効力
は麻薬のモルヒネの5,6倍は楽にあります。これだけの快感物質が私たちの脳内で作
られることは何を意味しているのでしょうか。
神様が私たち人間に「楽しみなさい」と言っているのだと思います。
人間は結構悪いことも考えるし、実際にそれをやってしまいます。
例えば「人をおしのけてでも自分が得をしよう」と考える人がいます。そうやって大金
を儲けたとします。あるいは地位や名誉を得たとします。そのような願望が実現すれば
その人はうれしい。うれしければ脳内モルヒネは分泌します。
しかしなぜだかそのような楽しみは長続きしないのです。必ずどこかでおかしくなる。
世のため人のためにならないこと、人から恨みをかうようなことをすると、どういうわ
けか脳がその人を滅びの方向へと誘導してしまうようなのです。
これはたぶん、神様が理想とする生き方にあったものだけが生き残れ、それにあわない
ものは出来るだけ消していこうとするメカニズムが、遺伝子というかたちで体の中に残
されているのだと私は解釈しています。脳には先祖の記憶までがインプットされていま
すから、そういうことがあってもおかしくないと思うのです。

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