2015年8月16日日曜日

No.145(アポロ13号船長との出会い)

アポロ13号船長との出会い

NTTコミュニケーションズ(株)ソリューション事業部
担当部長 家田信吾

1.はじめに
みなさんは、人類で初めて月に降り立ったアポロ11号のニール・アームストロング船
長のお名前はよくご存じのことと思いますが、米国におきましては、月に向かう途中
で宇宙船の大事故に遭遇しながら、沈着冷静かつ強靭な忍耐力にささえられて奇蹟的
に生還したアポロ13号のジム・ラベル船長のほうがむしろ有名で、神さまから与えら
れた半生を「人々に夢と希望を与える」ためにささげている器として人々の尊敬を集
めております。
彼の苦難に満ちたフライトと奇蹟の生還の実話は、1995年に映画化され大ヒットしま
した。ご覧になった方もおられることと思います。ここでは、彼との奇蹟的な出会い
がきっかけになって、洗礼を受けることとなった私の体験談を中心に述べたいと思い
ます。

2.NTTへの就職
私は1982年に日本電信電話公社(現在のNTT)に就職し、無線技術者として社会人の
スタートをきることとなりました。1983年2月には国産ロケットH1にて初の実用通信
衛星「さくら2号」が打ち上げられることになり、幸運にも宇宙開発事業団の種子島
宇宙センターに派遣されました。
生まれて初めて見る本物のロケットや発射台、管制センターの機器類のすばらしさは
目もくらむようでした。そして、衛星の打ち上げは大成功をおさめ、私はこの後しば
らく、「さくら2号」の監視制御の仕事に携わることとなりました。

3.米国への赴任
それから11年後の1994年の春、会社からNTTアメリカの国際調達部長としてNTT調
達交渉を担当せよとの辞令が出ました。米国に赴任して、すぐに日米政府間でNTT
調達協定交渉が始まりました。NTT本社との連絡、日本政府やワシントンの日本大
使館との連絡、それから米国政府の動向調査、米国政府を裏で動かしている米国
の産業界の情報収集をはじめ、交渉の資料準備などに忙殺されましたが、9月には
両国政府の大臣折衝を経て無事に交渉がまとまりました。
このNTT調達協定交渉が一段落してからは、本来の自分の専門分野である衛星
通信、携帯電話やPCS(日本ではPHS)など、無線通信や移動体通信のリサーチや
米国ハイテク企業との共同プロジェクトに活動の重点を移しました。

4.アポロ13号の大事故を知る
そんな頃、偶然に見つけたビデオによって、日本ではほとんど知られていなかったア
ポロ13号の大事故のことを知りました。みなさんご存じのように、アポロ計画は、故
ケネディー大統領が「1960年代のうちに人類を月に送る」ことを公約して始められた
史上最大のプロジェクトで、1969年の8月にアポロ11号のニール・アームストロング
船長が人類で初めて月に降り立ち、成功を収めました。
アポロ13号は、それから8か月後の1970年4月11日米国東部時間の13時13分、フロ
リダ州のケネディー宇宙センターから打ち上げられました。乗組員は船長のジム・ラ
ベル42歳、月着陸船パイロットのフレッド・ヘイズ36歳、指令船パイロットのジャッ
ク・スワイガート38歳の3名で、彼らは全員クリスチャンでした。
アポロ計画は30年以上も前に行なわれたのですが、技術的にも規模的にも史上最
大のプロジェクトでした。みなさんはスペースシャトルのことをご存じだと思いま
す。
スペースシャトルは見かけはかっこいいですが、その性能はアポロ宇宙船の足元にも
及びません。アポロ宇宙船は、地球から38万kmも離れた月まで飛んで行ける人類史上
最も速い乗り物であるのに対し、スペースシャトルは地表からわずか300km程度の超
低空をのんびりかすめ飛んでいるに過ぎません。その距離の差は何と1300倍にもなり
ます。

5.宇宙飛行士たちの奇蹟の生還
話がそれましたが、アポロ13号は打ち上げからちょうど55時間後、地球から33万kmの
彼方まで達したとき、テキサス州ヒューストンの管制官リーバーガットの指示に従っ
て酸素タンクの攪拌用ファンのスイッチを入れたことが原因となって酸素タンクが爆
発事故を起こし、大半の酸素を失ってしまいます。アポロ宇宙船においては、この酸
素を乗組員の呼吸用に使用するとともに、燃料電池で水素と反応させることによって
水と電気を作り出しておりましたので、酸素の消失は宇宙船の全機能の停止を意味
し、3人の宇宙飛行士の死は確実という重大な事態となってしまいました。
このとき、管制官のリーバガットは、自分の指示が原因で事故を起こし、どんどん
減少していく酸素と電気のゲージを見て絶望し、「自分は不幸をもたらすヨナになっ
た気がしてならなかった。」と言っています。
ヨナというのは、旧約聖書のヨナ書に出てくる主人公で、自分が神さまの言いつけを
守らず不信仰であったために自分が乗った船を遭難させてしまったという物語です。
時がたつにつれて、事の重大さが次々に明らかになり、NASA(アメリカ航空宇宙局)
は、ついに3人の宇宙飛行士の家族に対し、当時のニクソン大統領による次のような
声明文を用意しました。
「ご遺族の方々に対し、私は妻とともに心よりお悔やみ申し上げます。残されたご家
族の方々にとっては、深い悲しみを伴う痛手でありましょう。しかし、犠牲となった
方々が、偉大なる挑戦とフロンティア精神に満ちた旅に立ち向かってくださったこと
により、人類の未来は永遠に豊かなものになるでしょう。」
しかし、3人の宇宙飛行士たちは決してあきらめませんでした。3人のうちで最も若
かったフレッド・ヘイズは、後の記者会見で次のように述べています。
「私はこの事故に遭遇したとき、コリント人への手紙第一10章13節の次のみことばを
思い出しました。
『あなたがたの会った試錬で、世の常でないものはない。神は真実である。あなたが
たを耐えられないような試錬に会わせることはないばかりか、試錬と同時に、それに
耐えられるように、のがれる道も備えて下さるのである。』
私たちは、このみことばどおり、絶対に神さまに助けてもらえると信じ、そして神さ
まに祈りました。」と語っています。
なんと凄い信仰でしょうか。地球から33万kmの彼方で、もはや3人分の酸素は残され
ていないし、電気が切れれば誘導装置が止まるので、宇宙の彼方に飛んで行ってしま
うという絶体絶命の中で、このように冷静を保てる信仰とはいったい何だろう?
私は、なまじ宇宙開発に関与した経験があるために、「このような致命的な事故から
無事に帰還できることなんて不可能なのに、それをあきらめずに帰れると信じて祈る
とはいったいどういう神経なんだろう?」と不思議に思いました。
地上では、誘導装置を開発したマサチューセッツ工科大学、サターン5型ロケット本
体を開発したロックウェル社、月着陸船を開発したグラマン社、計器ユニットを開発
したIBM社などの2万人の人々が、3人の宇宙飛行士を救うために様々な実験、シミュ
レーションに協力しました。
さらに、欧米各国のキリスト教会は、彼らの無事の帰還を願って特別祈祷を行ないま
した。面白いことに、共産主義の国、旧ソビエト連邦の宇宙飛行士たちも、3人の宇
宙飛行士が無事に帰還するように神さまにお祈りしたそうです。
そして、不眠不休のシミュレーションの結果、月着陸船を救命ボートにすることにな
り、3人の宇宙飛行士は、ここの酸素と電気を使って地球の近くまで生き長らえ、最
後は電気を節約するために暖房を切って極寒になった指令船に乗って大気圏再突入を
果たし、事故が起こってから3日半の苦闘の末、本当に奇蹟の生還を果たし、彼らは
英雄として空母イオウジマに迎えられます。
私がこの話に感動し、このような「不可能を可能にしてしまう秘密」を知りたいと
思っていた矢先、この実話がユニバーサルスタジオによって映画化され、全米に大反
響を巻き起こしました。私は熱心にこの映画を見て、本もビデオも買いました。
しかし、「不可能を可能にしてしまう秘密」はどうしても解明できません。私は、ど
うしてもこの事件の主人公であるジム・ラベル船長に是非とも会って話を聞きたいと
思うようになりました。しかし、1997年の年明けに会社から帰国命令が出てしまった
ため、後ろ髪を引かれる思いで帰国しました。日本に戻ってしまっては、もうラベル
船長に会うチャンスはなくなってしまう。しかし、運命から逃れることはできず、
1997年の4月に無念の帰国をしました。

6.神さまに計画されたジム・ラベル船長との出会い
ラベル船長のことを忘れかけていた1年4か月後の1998年の8月に米国の自動車業
界との会合のために突然デトロイトに出張することになりました。それまでに何度
も海外出張に出ていましたが、このときに限って、妻からもらったギデオン協会のバ
イリンガルの聖書を持って行きました。
行きの飛行機の中で、ヨハネの福音書、使徒行伝、ローマ人への手紙を読みました
が、私にとっては作り話にしかすぎず、キリストの死と復活や、使徒行伝の聖霊のみ
わざはどうしても信じられませんでした。
会議の第1日目に、参加者たちが気になる話をしているのを耳にしました。次の日の
昼食会に、あのアポロ13号のジム・ラベル船長が来賓として来られるとのことです。
嘘だろうと思って翌日のアジェンダを確認してみたら、やはりアポロ13号のジム・ラ
ベル船長が来賓として講演をすると書いてあります。私は大変驚きました。
日本を発つ前に入手したアジェンダには、そのようなことは一言も書いてありません
でした。おそらく直前に決まったものと思われます。私は、あれほど会いたかったラ
ベル船長が来るとは知らず、突然決まった出張に大慌てでやって来たのでした。
そして昼食会の当日、フォード社の技術担当副社長がスピーチを行なったあと、いよ
いよラベル船長が登場しました。アメリカ人ならばだれでも知っているヒーローの登
場です。割れんばかりの満場の拍手に私も興奮しました。
私は、一言も聞き漏らすまいと耳をこらしました。彼は、NASAの本物のフィルムを
使って、アポロ13号の打ち上げから苦難の帰還までを、穏やかではあるが力強い口調
で語りました。とても70歳とは思えない元気な口ぶりでした。彼はそのスピーチの中
で、次のことばを何度もくり返しました。

「みなさん、何事もあきらめてはいけません。神さまを信じ、夢と希望を持ちなさ
い。未来はみなさんの手のうちにあります。勇気を持ち続けなさい。祈りは必ず聞か
れます。希望を失ってはいけません。」

私には、今も彼のこのことばが耳に焼きついています。会場に居合わせた、ビッグス
リーと言われる米国自動車産業の幹部たち、そして自動車産業に関わる部品メーカや
通信事業者など米国の産業界を引っ張るリーダたちも、このスピーチから大きな感動
を得ていることがわかりました。
また、私はこの会場で、初めて強烈な聖霊さまの働きというかオーラのようなものを
感じ取りました。そして、彼がなぜ、あのような困難な事故から無事に帰還できたか
の秘密を瞬間的に悟らされました。そのとき、行きの飛行機の中で読んだヨハネの福
音書12章24節が思い浮かびました。

「よくよくあなたがたに言っておく。一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それは
ただ一粒のままである。しかし、もし死んだなら、豊かに実を結ぶようになる。」

彼は、もし無事に月に降り立ち何事もなく地球に帰還していたら、たいして注目もさ
れなかったでしょう。しかし、いったん死の運命に直面し、大統領による殉死の声明
まで準備された後、彼らの自身の強い信仰によって奇蹟的に帰還し、そのことをあか
しすることによって多くの人々に夢と希望を与え続けているのでした。私は深い感動
を覚えました。そして、私自身のこの突然の出張もまた、神さまによって準備された
ものであることを知りました。
帰りの飛行機の中で、新約聖書の始めのマタイから順にマルコ、ルカと読んでいきま
した。すると、今まではさっぱりわからなかったみことばの意味がよくわかるように
なっていました。ラベル船長との衝撃的な出会いにより、自分自身が変えられてし
まったことを感じました。どの部分を読んでも、感動のあまり涙が止まりません。
デトロイトから成田まで、11時間のフライト中ほとんど聖書を読み続け、そして泣き
続けました。自分の40年間の人生で、これほど泣き続けた思い出はありませんでし
た。感動の喜びの涙でした。そして、成田に到着するまでには、洗礼を受ける決心が
ついていました。
日本に着いてから、おかしなことに気がつきました。
「俺は、どうしてこの聖書を持って出張に出たのか?」という疑問です。自分でもよ
くわかっていませんでした。
「飛行機の中では暇だろうし、会議は英語だから英語の勉強になるだろう。」と思っ
てバイリンガルの聖書を持って来た記憶はありましたが、なぜ今回に限って持って来
たのかがよくわかりません。
家に帰ってから妻に聞いてみたら、「この聖書は大学に入学したときに、ルカという
ドイツ人の聖書の先生にもらったんですが読まずにず〜と持っていました。あなたと
結婚したときに嫁入り道具の一つとして持って来たんですが、じゃまなので引越しの
たびに何度も捨てようと思ったんですが捨てられずにいました。あなたが出張に出か
けるとき、信仰に目覚めるようにと祈って手渡したんですよ。」と言いました。私は
神さまのあまりにも手の込んだ計画に恐れを抱きました。
私が妻と知り合ったのは、彼女が私の大学の隣にあったカトリック系の大学に入学し
たときです。ちょうどそのころ、神さまはルカという名前の大学の先生を使って妻に
この聖書を与え、私と知り合わせ、その6年後に結婚させ、ご丁寧にもさらにその13
年後、何と20年がかりで私にその聖書を出張に持って行かせて導くというみわざをさ
れたのでした。このような経緯により、先に決心していた妻とともに1998年の12月に
洗礼を受けました。

7.日本に必要な神さまの知恵と愛
今の日本は、バブル経済が破綻した後、大人も子どもも心が乱れ、国全体がおかしく
なっています。今の日本に必要なことは、「神さまの知恵」と「神さまの愛に満ちた
人間関係」ではないでしょうか。最後に、私が最も好きなみことばである箴言3章
13〜15節をご紹介してこのあかしを締めくくりたいと思います。

 「知恵を求めて得る人、悟りを得る人はさいわいである。知恵によって得るもの
は、銀によって得るものにまさり、その利益は精金よりも良いからである。知恵は宝
石よりも尊く、あなたの望む何物も、これと比べるに足りない。」



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