2015年8月15日土曜日

No.072(「サッカーは超複雑系」 中田英寿 )

「サッカーは超複雑系」 中田英寿  
           (サッカーというスポーツを表現して。) 

直径22センチのたった1個のボールを22人の選手達が操るサッカーだが、時にボー
ルが意思を持っているとしか思えないような信じがたいことが起きる。あの広いグラン
ドの中で点と点を結ぶようにパスが通り、選手を避けるような弾道でボールがゴールに
突き刺さっていく。
そんなとき、選手達は、確かに相手チームと戦っているにもかかわらず、勝敗は自分た
ちの手の届かないところにあるのかもしれないと、考えたりする。
「勝負では”ラック”は絶対に関係あると思う。ジーコやレオナルドやビスマルクが
ピッチにはいる前に祈るのを見たりして、余計にそう思った。」
中田は、日本代表に呼ばれる前、こう言っていた。
「ワールドカップなんてがんばったって行けるものじゃない。出たいって騒いだところ
で出られるわけじゃないし、出るつもりがなくても決まるときには決まっているか
ら。」
だが密かに自分の運の強さを信じてもいる。
「子供の時、交通事故にあって、自動車に吹っ飛ばされてもケガしなかった俺って、結
構、強運の持ち主だと思うんだけど」
ラックが勝利を呼び込むことは事実だろう。しかし、そのラックはどうすれば呼び寄せ
られるのか。彼は、運を味方に付ける方法を心得ている。努力だ。
ボディ・コンタクトに負けない体を作るため、中田はチーム練習後もクラブハウスのジ
ムに残ってウエイトトレーニングを続ける。
「高速道路の渋滞に巻き込まれるのが嫌だから、ここで時間を潰している。」
気恥ずかしくて、周囲にはそんな言い訳をした。
やがて、幾層にも重なった強靱な筋肉は全身をくるみ、激烈な当たりにも絶える強固な
肉体が出来上がった。もちろん、束の間でもトレーニングをサボれば、すぐに筋肉の鎧
は消える。
ベルマーレと代表のユニホームに交互に袖を通す彼の身体に、休日はなくなった。
「サッカーほど思い通りにならないスポーツも少ないでしょう。何たって、あのブラジ
ルに日本が勝っちゃうんだから。」
サッカーの混沌とした複雑さがたまらなく好きだ。「単純」は自分の好みではないと
思っている。

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