ドイツの哲学者・詩人・古典文献学者。
前世紀末から今世紀にかけてきわめて刺激的な影響力をもった思想家である。
生涯と著作
プロイセンのレッケン生まれ。ルター派の牧師であった父が5歳のときに死に、母親
にそだてられた。ボン大学とライプチヒ大学で古典文献学をまなんだのち、24歳で
バーゼル大学の古典文献学教授としてまねかれた。彼は病気がちで、終生弱視と
偏頭痛になやまされていた。79年に病気が悪化したため、大学をやめ、その10年
後に発狂。回復することなく、ワイマールで死亡した。
ニーチェに影響をあたえたのは、古典文献学研究でまなんだ初期ギリシア哲学、
意志の哲学をといたショーペンハウアー、進化論、そして音楽家のワーグナーで
ある。
思想
ニーチェの基本的発想のひとつは、キリスト教によって代表されるような伝統的価
値が当時の人々の生活において効力をうしなったという洞察である。この洞察を彼
は「神は死んだ」という言葉で要約した。
こうした主張の背後には、ニーチェの辛辣(しんらつ)な西洋哲学批判があった。彼は、
西洋思想の歴史は、プラトンのイデアやキリスト教道徳といった本当はありもしない超
越的な価値を信じてきたニヒリズムの歴史であるとし、このニヒリズムが表面にあらわ
れてくるわれわれの20世紀を予言した。そして、ニヒリズムの極限形態としての「
永遠回帰」を肯定し、「力への意志」をもつことで、このニヒリズムを克服しなければ
ならないと考えた。
影響
ニーチェの超人思想は、奴隷制社会を肯定し、全体主義を正当化するものとして解
釈されたこともある。実際、ナチズムがこうした曲解によってニーチェを利用した。
しかし、こうした誤解にもかかわらず、彼の思想はドイツ文学や現代哲学に大きな
影響をあたえた。文学への影響はムージルやトーマス・マンあるいは表現主義にそ
の足跡をたどることができるし、哲学ではヤスパース、ハイデッガー、カミュ、サルト
ルといった実存主義の哲学者にニーチェの影響がみとめられる。日本では1901年(
明治34)に高山樗牛がニーチェを紹介してから、大正教養世代の人生論の必読書
になった。
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