2015年8月16日日曜日

No.136(世界を変えよ)

世界を変えよ

今朝、とても心暖まる話がラジオから流れていた。それは、1913年、フランス南部の
プロバンス地方で「ウォーキング・ツアー」に出かけた20歳くらいの若者の話だっ
た。
「ウォーキング・ツアー」とは、バックパックと寝袋を携帯して、人の少ない森など
をハイキングすることである。おもに裏道や山道を通り、簡素なキャンプ場、ユース
ホステル、農家などに泊めてもらう。
当時のプロバンス地方はひどい田舎で、農作物の育たない荒れ地だった。森林伐採
や、集約農業のやりすぎで、ほとんど木のない不毛の地と化したからだ。
肥えた農地にするには、土地を保護する役目をする樹木もなければならない。樹木は
土壌の水分を保ち、直射日光をさえぎって、地面が乾燥してしまうのを防ぐ。また土
地の侵食、土砂の流出も防いている。木々のない地域では、雨で土壌が流されてしま
い、それによって洪水が起こり、1930年代の大恐慌中に「黄塵地帯」と呼ばれたアメ
リカ南西部のように、不毛の地となってしまう所もある。
このフランス南部のプロバンス地方は土地がすっかりやせてしまい、ほとんど木のな
い状態であった。そして土を保っておく木がないために、土壌は雨に流されていた。
その地域全体が渇ききった不毛の地と化しており、農業も殆どすたれ、野生動物さえ
姿を消してしまっていた。動物にも住むために安全な場所、安心できる緊みなどが必
要だが、木がなければ、雑草や低木も育たず、生きていくために必要な食べ物もな
かったからだ。水も必要だが、その地域には木がなく、土地は水分を保つことができ
ないので、ほんの僅かな流れしかなかった。
というわけで、若者が旅していたこの土地は非常にやせていて、農業もほとんど行な
われていない荒れた不毛の地だった。村は活気がなく、すたれ、荒れ果てていた。大
部分の村人は村を捨て、他の土地へと引っ越していた。
ある夜、この若者は羊飼いの小屋に泊めてもらった。その羊飼いは白髪まじりで50代
半ばだったが、なかなか壮健だった。小屋は小さいながらも、きれいに片づいてい
て、簡素な家具が置いてあった。親切な羊飼いは、若者を暖かくもてなし、若者は何
日かそこに泊まらせてもらった。夜になると、羊飼いは、ランプの光をたよりに何時
間もかけて、本の実をより分けていたので、若者は好奇心をそそられた。カシ、ハシ
バミ、クリなどの実を、テーブルの上で非常に慎重かつ真剣に選り分け、質の良くな
いものは捨てていった。ついにその夜の仕事が終わると、羊飼いは選んだ木の実を
ナップサックに入れたのだった。
次の日、羊の群れを連れて外に出た羊飼いは、行く先々で 昨夜の木の実を植えてい
くのだった。羊が草を食べている間、羊飼いは杖を取り、羊の様子に気をくばりなが
ら、その辺りをまっすぐ歩いていった。何歩か歩いては、杖で地面をぐっと押して、
深さ数センチの穴をあけた。それから木の実をその穴に落として足で土をかぶせるの
だ。羊飼いはまた何歩か歩くと、乾いた地に杖で六をあけ、木の実を落とした。こう
して羊飼いは日中ずっと、羊に草を食べさせながら、プロパンス地方を何キロも歩き
回った。毎日違う場所に行き、殆ど木がない場所に、カシ、ハシバミ、クリなどの実

植えていったのだった。不思議に思った若者は羊飼に尋ねた。
「一体何をしているんですか?」
「木を植えているんだよ。」
そこで、若者は思わずこう言った。「でも、どうしてですか? この実が育って木に
なり、あなたがそこから利益を得るのは、まだ遠い先の話ですよ! 木が大きくなる
まで、生きていないかもしれないし!」
「その通り。だが、いつか木は大きくなって誰かの役に立ち、この地域が前のような
美しい所になる助けになるだろう。わしはそれを見ることができんかもしれんが、わ
しの子供達が見ることだろう。」
若者は、実際にその成果を見たり、利益を得たりすることはないかもしれないのに、
これからの世代のために住み良い土地を作ろうとする、その長期的な展望と無私の姿
に感動したのだった! 羊飼いは、木が育って土地を守ることを願いながら、将来の
ために木の実を植えていたのだ。
20年経ち、その若者は40代になった。再びプロパンス地方に行った彼は、そこで
の光景に思わず目を見張った!  谷間全体が、様々な種類の木が繁る美しい森で覆
われていたのだった! もちろんまだ若木で、6、7メートルしかなかったが、木に
は違いなかった。
その谷全体に生命がみなぎっていた! 青々とした草、潅木、そして動物達もいた。
土地は潤い、農夫達も畑で働いていた。20年前の不毛で荒れ果てた状態と比べれ
ば、地域全体が生き返ったかのようだった。
「あの羊飼いはどうなったんだろう。」と、彼は思った。驚いたことに、羊飼いはま
だ生きていた! 20歳の若者にとって、50代の人はとても年老いて見え、もう先
は長くないように思えるものだが、その羊飼いは75歳くらいで、かくしゃくとして
いた。相変わらず、あの小さな小屋で、毎晩、木の実をより分けていたのだった。そ
してこの40代の訪問者は、最近フランス政府の視察団がパリからこの新しい森を見
に来たことを耳にした。彼らにとって、ここはまるで奇跡の森であった。そして視察
団は、この谷間と地方全体が美しい若木や草に覆われたのは、この一人の羊飼いが、
何年にも渡って、来る日も来る日も羊を見ながら、休むことなく、カシ、ハシバミ、
クリなどの実を植えていた結果だということを知ったのだ! 彼らは非常に感銘を受
け、その羊飼いに深く感謝したので、たった一人でこの地域全体に緑をもたらした功
績を称えて、羊飼いに特別年金を与える事をフランス下院議会で決定したのだった!
一人の人のひたむきさによって、この地域全体がよみがえった。再び美しい場所と
なり、経済が復興し、野生動物や、農業、水、土壌も復活したのだ! 人口まで増え
た。何もかも、木が育ったおかげだった。
だから、世界の現状にがっかりすることがあっても、決してあきらめてはいけない!
大きな国々の政府や軍隊や戦争によって、歴史の流れや世界の状況が変わっている
のを見て、がっかりすることもあるだろう。「ああ、私などつまらぬ存在ではないか
? 何ができるというのか? お先真っ暗で、できる事など何もないみたいだ! 
たった一人で世界を良くするためにできることなんて何もない。だから努力しても、
何になるだろう? 
何をやっても無駄だ。」そして、世界がどうなろうと構うものかと、あきらめてしま
いたくなる!  時に、こんな世界は破滅して当然のように思われるからだ。
しかし、この素朴な羊飼いが何十年にも渡る努力によって証明したように、たった一
人でも世界を変えることができる!
世界全体を変えることはできないかもしれないが、自分がいる部分は変えることがで
きる。この一人の羊飼いは来る日も来る日も、何年も何年も、忠実で犠性的な働きを
したことで、南フランスの全地域を完全に変え、よみがえらせたのだった!
もし一つの人生を変えたなら、世界の一部を変えたことになる。これは、世界全休も
変わる望みがあることを証明している! 一つの人生を変えられるなら、もっと変え
る事ができ、多くの人生が変わり、地域全体がよみがえり、ついには世界を変える
ことができるという可能性を示しているのだ。それも、誰か一人の人が始める事で。
それはあなたかもしれない!

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