2015年8月15日土曜日

No.070(ガリレオの生きた時代②)

ガリレオの生きた時代㈪

ある日の午後、ガリレオはサルビアッティの邸宅の石段に、彼と並んで腰を下ろしアル
ノー川の美しい渓谷を見下ろしていた。二人は、金星に関する重要な発見について議論
を交わしていた。
「フィリッポ、何もかも非常に見事に、決まった形にしたがっているんだよ。天体を観
察して星の動きをみることはバラバラの絵パズルを正しく組み立てていくのを見るのと
同じなんだ。世界の中心に太陽を置いてみると、これまで説明のつかなかったことが、
容易に理解できるようになる。たとえば、惑星が明るさと変えるという問題をとってみ
よう。

今から何百年も前からわれわれが地球から眺めている惑星が、同じ明るさをもつもので
ないことを、多くの天文学者たちが見つけていた。
ある場合には、火星は非常に明るく、別なときには、それは暗くなって、ほとんど見え
ない。同じように、金星も明るくなったり暗くなったりする。もしも、アリストテレス
学者が言うようにこういう惑星の一つ一つが地球の周りを回るとすれば、、その明るさ
は、いつでも同じでなければならない。もちろんこの問題を解決するために、これまで
の天文学者たちは、惑星はその軌道の上を回るときに、まん丸ではなくて、少しゆがん
だ円をえがくという想像をして満足していた。そうなると、惑星の軌道はこんな風に見
えるのではないかな。」

ガリレオはしゃがみこむと、人差し指で意思の上に、ばねを引き伸ばしたときのような
線を書いて見せた。
「しかし、フィリッポ、こんな風に考えると、惑星の動きを予知する方法が大変非科学
的で面倒になり、実際に質問に答えたことにならない。」
「ああ、ようやくわかり始めました!!」とサルビアッティが叫んだ。「もしも、惑星
が太陽のまわりをまわり、われわれが住む地球も、ほかの惑星と同じように動くとすれ
ば、——もしそうなら、あるときは地球は金星に近くなり、べつなときには二つが離れ
るということがあるわけですね。」

「うまい!!今君が言ったことがまさに正しい説明だ!!そして惑星が太陽の光を反射
しているに過ぎないとすれば、それらが自分自身の光を持っているとしても、きみが予
想するような明るさの変化が生じないことになる。実際に起こっていることを理解すれ
ばいいのに、無理やりこじつけて妙な運動を発明する必要はないんだ。」
「ぼくは、これまで本当に理解したことはありませんでした!!天文学に関するラテン
語の教科書を読むと、言葉が難しいので、そこに述べられている考えを十分理解するこ
とができないんです。」

「フィリッポ、君はまさに痛いところをついたわけだ!!アリストテレス学派の教授た
ちは、知識を神秘的な、隠されたものにし、仲間だけしかわからないようにすることに
は成功した。しかし、大学教授以外の頭のいい人たちが、科学の分野で新しい発見をし
たり、新しい考えを述べたりすることがなぜいけないんだ?結局、この世界は王や王子
たちに支配され、戦争は将軍たちによってはじめられ、市場は商人や銀行家たちによっ
て支配される。今いったような人たちが、実際にこの世界を動かしているんだ!!」
「僕が銀行家ですが、先生のご意見に反対することはできません。」

「それだけじゃない、裏切りというものがある。まったく裏切りという言葉がふさわし
い。学問の世界では、新しい知識の理解を妨げるという裏切り行為が見られる。わたし
は、自分の仕事に関する限り、自分がこれから書く論文や本は、大学の教授のためにだ
けではなく、知識を持ったあらゆる人たちに当てて書くつもりだ。フィリッポ、これか
ら私が出版するものは全部イタリア語で書き、ラテン語ではなく、すべての人たちが読
める言葉にしたいんだ!!」
「先生、しかし、そうすることには勇気がいりますね。学問的なことをみんながわかる
言葉で書けば、大学の先生たちをもっと怒らせることになるのではありませんか?」

「正直に言うと、本当の敵は大学教授たちだと、私はよくわかっているんだよ。あの連
中は、まったく盲目的にアリストテレスに従うので、自分自身の目さえも信じることが
できないくらいだ。もし、教授たちが私の新しい考えを受け入れないなら、大学以外の
世界の指導者たちが受け入れてくれるだろう。ね、フィリッポ。科学の新しい時代がは
じまりつつあるんだ。それは自然に対して数学を適用するという科学なのだ。アリスト
テレスのしもべにしか過ぎない連中が、いくらわめいてみたところで、自然に関する人
間の考えを変える、この新しい科学を妨げることは決してできない!!このことについ
ては、惑星が太陽のまわりをまわるという事実と同じくらい、わたしは確信を持ってい
る。」

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