私たちの住む宇宙は、なぜ知的生命のいる宇宙であって、なぜ物質
だけの宇宙にならなかったのか。これについて多くの科学者は最近、
宇宙は知的生命の存在し得る宇宙となるように、誕生の際からあらか
じめ「プログラムされていた」と考えるようになっている。
どういうことかというと、たとえば「自然定数」というものに着目するとよ
くわかる。私たちの宇宙には、たとえば光速、電子の質量、重力定数、
プランク定数といった、ある″決まった値〃がある。これがなぜ″その
値〃なのかを考えると、それはあたかも″知的生命を存在させるべくそ
の値をとった〃としか考えられないほど、絶妙にコントロールされてい
る。
たとえば京都大学の佐藤文隆・教授によると、電子の質量が一%違
っただけでも、人間はできないという。一%くらい違ったっていいじゃな
いか、と思いたくなるが、たった一%でもダメなのである。それほどこの
宇宙は、絶妙にコントロールされて「知的生命のいる宇宙」となってい
る。
また、中性子の質量がわずかに〇・一%違っただけでも生命はでき
ない、という研究結果が出ている。もしそれが〇・一%多ければ、宇宙
の中に生命が必要とする重元素(炭素、酸素、カルシウム、鉄など)が
形成されない。反対に〇・一%少なければ、宇宙のすべての星がすぐ
中性子星またはブラック・ホールになって、崩れてしまう。いずれにして
も、生命は誕生し得ないのである。
原子核内の力——「核力」には、「強い核力」と「弱い核力」があるこ
とが知られている。もし「強い核力」の定数が二%違っただけでも生命
はできない、という研究結果が出ている。「弱い核力」もそうである。そ
れが数%違っただけでも、生命はできない。そのほか重力定数、電磁
力定数、光速等がほんの少し違っただけでも生命はできない、というこ
とがわかっている。
一方、ヘリウム、ベリリウム、炭素、酸素などの核の基底状態のエネ
ルギー・レベルも、驚くほど微調整されていることがわかった。それが
わずか四%違っただけでも、生命体に必要な炭素と酸素が生じ得ない
ことになるのである。
現在の宇宙は膨張しつつあることが知られている。この膨張率も、絶
妙にコントロールされている。それがもしほんのわずか——アラン・グス
博士の計算によれば一〇の五五乗分の一——大きければ、銀河系も
星も形成されなかったであろうという。反対に同じ割合小さければ、太
陽のような星が形成される前に宇宙が崩れ落ちてしまうシナリオとなっ
た。いずれにしてもそのような宇宙は、「知的生命のいる宇宙」とはなら
なかったであろう。
ほかにも多くの研究結果が出ている。宇宙の何をとっても、それが絶
妙にコントロールされ、微調整されている事実が浮かび上がってきた。
つまり宇宙は細かい個々のこと、および総合的なことの両面において、
非常に微妙なバランスのもとに造られている。
だからこれを研究した人々の多くは、たとえそれまで無神論の立場を
とっていたような人であっても、なにか宇宙を超越した知的実在者の存
在に、思いを向けざるを得なくなったと告白している。たとえばポール・
デイヴィズ博士は、
「その裏に、黒幕的な何かが存在している強力な証拠が見えます。…
…宇宙を作り上げるために、まるで誰かが自然界の定数を微調整した
かのようです。……すべてがデザインされている、という印象は強烈で
す」
と語った。フレッド・ホイル博士も、宇宙の形成において「超知性」の働
きがあったように見える、と書いている。ジョージ・グリーンシュタイン博
士は次のように述べている。
「すべての証拠をながめながら、何かそこに超自然的な存在者がかか
わっている、という思いが絶えず浮かんできます。そういうつもりではな
かったのに、私たちは、知らないうちに絶対的実在者の存在の証拠を、
発見してしまったのでしょうか」
宇宙がこれほど絶妙にコントロールされ、微調整されて造られている
という事実は、無神論の立場からはどうしても説明しにくいことである。
しかし、宇宙の創造者を認める有神論の立場からは、きわめて理にか
なったこととして受けとめられる。
たとえば、ここにテレビがあるとしよう。技術者はテレビをつくるとき
に、ブラウン管の電圧を何ボルトにするか、スピーカーに流れる電流を
どのくらいにするかなど、様々な値を決める。テレビ内部の各部品にか
かるいろいろな電圧や電流、抵抗の数値などを定めて、テレビをつくり
あげる。
それらの数値をもし一つでも間違えてつくったりすると、テレビは用を
たさない。画面が映らなかったり、ギーギー、ガーガーいうだけであろ
う。あるいは、ただの粗大ゴミになるだけであろう。
私は小学生のころ、ラジオのキットを買ってきて、よくハンダごてを片
手に組み立てたことがある。ところが部品を組み立てるとき、別の部品
をつけたり、電圧を間違えたりしたので、なかなか聞こえるようにならな
かった。
一つ間違えても、ただのゴミになるだけであった。きちんと機能するも
のにするためには、すべてを間違えずに組み立てる必要があるのであ
る。
同様に、この宇宙が見事なかたちで「知的生命のいる宇宙」となって
いるのは、神が物質界の様々な数値を最も適切な値に定められたから
である。様々な自然定数を、最も都合のよいように定められたからであ
る。
一台のテレビやラジオをつくるときでさえ、多くの優れた人々の知性
と、長年の研究、また努力が必要であった。そうであれば人間という最
も複雑で高度な生命体、またこの偉大な宇宙をお造りになったかた
は、一体どれほど優れた知性を持つかたであろうか。
アメリカ航空宇宙局(NASA)の一部であるゴダーダ宇宙研究所の所
長R・ジャストロー博士は、かつては不可知論者として知られた人であ
った。だが彼は、いまや科学の発達に伴い、
「神が宇宙を創造したと信じるよりほかにない」
状態に来ていると述べた。宇宙は、それほどによく造られているので
ある。
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