2015年8月15日土曜日

No.039(北アイルランド: 自治政府発足 歴史的一歩を踏み出す)

☆☆☆北アイルランド: 自治政府発足 歴史的一歩を踏み出す

【ベルファスト(英国・北アイルランド)2日笠原敏彦】

犠牲者約3600人を出し、西欧で戦後最大の紛争地になった北アイルランドは2
日、抗争を続けてきたプロテスタントとカトリックが共存する自治政府を発足させ、
歴史的な一歩を踏み出した。欧州統合の大きな流れの中で、焦点である帰属問
題の重要性は薄れ始め、紛争当事者は現実的な選択を行った。自治の先行きは
不透明とはいえ、分断社会に和解の礎が確実に根付きつつある。

和平は、英国統治の継続を願うプロテスタントとアイルランドとの統合を望むカト
リックが、帰属問題を「将来の住民の意思に任せる」ことで成立した。現在の人口比
はプロテスタント約57%、カトリック約43%で、15年前後で人口比は逆転する
と予想され ている。

英、アイルランド両政府は2日、ダブリンで新条約に調印し、和平合意の重要項目で
ある「南北評議会」などを発足させた。同評議会は自治政府とアイルランド政府の閣
僚で構成。アイルランド島を一体として捉え、行政全般にわたり協力関係を築いてい
く。

北アイルランドは、英国に残留しながらアイルランドとの政治的関係を強めるとい
う、欧州統合の枠組みの中での実験的試みに乗り出したと言える。一方、アイルラン
ド政府は同日、1937年以来、北アイルランドの領有権を主張してきた憲法の条文
を削除した。

ブレア首相は2日、「平和と和解が実現する大きなチャンスが訪れた」と語った。ま
た、アイルランドのアハーン首相も「史上初めて恒久和平の基盤を得た」と称賛。英
政府にとり、アイルランドの植民地化を起源とする同紛争の平和的解決は「歴史の清
算」を意味し、英、アイルランド関係も新時代に入った。
(1999年12月2日 毎日新聞より一部転載)

《メモ》
英国のアイルランド支配は12世紀にさかのぼる。1921年にアイルランド自由国
(37年共和国として独立)が成立するが、北部六州が英国領に残留、これが北アイ
ルランドとなった。
人口150万人のうち、英国にとどまることを望むプロテスタント住民は6割。残り
の4割のカトリック住民はアイルランド統一を求めている。
1969年に両派の過激派に英軍がからんだ紛争が起こって以来、3200人をこえ
る人命が失われてきた。

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